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私は美玖で木工の職人をしております、荒巻と申します。
あれはまだ田村様が守護の型の修練を始めて間もない頃でした。
お千代探し1
私は夕刻になっても戻らないお千代を探してあちらこちら駆けずり回っておりました。
いつもなら夕飯には腹をすかして帰ってくるのですが、その日は陽が傾き、烏が鳴く頃に鳴っても姿を戻ってきませんでした。
妻を病で亡くしてからというものは、お千代と二人きりの生活でしたので、お千代がいなくなるとどうにも寂しく、何か急に不安に襲われて川の方へ行ってみました。
お千代探し2
すると遠くで鳴き声が聞こえるでありませんか!
間違いない、あれはお千代の声だ!
そう思って声のする橋の方へ走りました。
お千代探し4
お千代探し5
私はもう頭が混乱して何がなんだかわからなくなっておりました。
ここら辺りの流れは結構速く、お千代の姿は浮かんだり沈んだりしながら、
あっという間に橋をくぐり流れて行きました。
情けないことに、私は金槌だったのです。水面までの高さも、速い流れにも恐怖感があったのです。
しかし、このままではお千代は流されて行くばかり・・・
いよいよ意を決し飛び込もうかと我が身を奮い立たせたその時、ひとりのお侍様が橋を通りかかったのです。
お千代探し6
お千代探し7
それが田村様でした。
田村様はすぐさま私の方へ駆け寄り事情を聞くと、着ていたものを脱ぎ始めました。
私は恐れ多くて、それだけはおやめくださいとお願いしたのですが、
田村様は私の言うことは全く聞き入れませんでした。
お千代さがし9
「お千代とは猫であったか!」
「はい。ですから、どうかお気になさらず!畜生の命でございます。お見逃し下さいませ。」
私がそう申しますと、田村様はお言葉を荒げて私にこうおっしゃいました。
「馬鹿者!命に人も畜生もあるものか!どうでもいい命ならばなぜお主はそのようにうろたえておるのだ!?」
「し、しかし、お侍様の身にもしものことがあったら私は・・・」
「心配いらぬ!拙者、泳法を身につけておるゆえ!そこで見ていろ!」
お千代探し8
そう言ってまだ冷たいであろう川面に身を投じたのであります。
お千代探し10
間もなく、お千代は田村様の手に抱かれて、私のもとに戻ってまいりました。
私はなんとお礼を申し上げてよいのかわからず、その場で田村様に深く地にこすりつけるほどに頭を下げるしかありませんでした。
それでも田村様は私の頭を上げさせ、
「申し訳ないが腹が減った」
とだけおっしゃいました。
私は汚い長屋に田村様をご案内して風呂を沸かして着替えをお渡しし、夕餉を作らせていただきました。
荒巻との会話1
お千代は妻が亡くなった翌朝、突然土間に現れた迷い猫でした。
千代というのは妻の名前です。
妻に話しかけるように、猫に話しかけているうちにそう呼んでいたのです。
お千代はひとりになった私のそばにいつもいてくれました。
仕事してる間も、私の邪魔をせず、そばで寝転がっておりました。
時々外へ出かけても、ちゃんと夕刻には帰ってくるのです。

田村様はそんな私の話を微笑みながら聞いて下さいました。
田村様もいろいろなお話をしてくださいました。
自分は侍と言えるほどの者ではない、どちらの勢力にも属さない浪人であると、あの時にはおっしゃっていましたが、もともとご両親が古賀の辺りのご出身だそうで、おそらくは新政府に行くだろうと、少し諦めたようなお言葉でございました。

田村様とは不思議に気が合いまして、その日は夜中までいろいろな話をさせていただきました。
私も久しぶりに人と長く話せたので嬉しくて嬉しくて・・・つい話し込んでしまいました。
旅立ちの朝
翌朝のお別れは寂しい気持ちになりました。
しかし、田村様は、時々美玖に来てはこの長屋を訪ねてくださるとおっしゃいましたので、
どうぞ田舎のじじいの所に遊びにくるとでも思って、宿代わりにお気軽にお寄り下さいと申し上げました。
別れの時
その時から私は、田村様のために木工だけでなく、軽金、重金などの技術も身につけようと思ったのです。いつか田村様に業物の太刀を贈るのがせめてものご恩返しと思っているのです。
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